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神戸地方裁判所姫路支部 昭和46年(ヨ)123号 決定 1971年8月16日

債権者(選定当事者) 青田武

右債権者代理人弁護士 前田知克

債務者 北中高

主文

債務者は別紙目録記載の土地に、ニベ、その他皮革廃棄物を持込んではならない。

債務者は右土地にすでに持込んだ、ニベ、その他皮革廃棄物(右土地上にある建物内部に存する物を除く)を直ちに撤去せよ。

申請費用は債務者の負担とする。

理由

本件疎明によれば次の各事実が認められる。

別紙目録記載の土地(以下本件土地という)周辺は、田畑の間に家屋の存在するいわゆる農村地帯であるところ、債務者は昭和四五年八月頃右土地をその妻北中佐代子名義で取得し、同年一〇月頃より皮革の廃棄物であるニベの集積場として使用している。債務者は右ニベを姫路市内高木地区の皮革業者より買取って本件土地に搬入集積し、その量が約一〇屯位に達すると大型トラックで鰻の餌として豊橋方面に出荷しているものである。

他方債権者らは本件土地に近接して土地もしくは建物を所有して古くよりそこに家族と共に居住している者であるが、債務者が本件土地をニベの集積場として使用しはじめて以来その強烈な悪臭のため日夜精神的、肉体的に絶大な苦痛を蒙っているものである。

ところで債務者は、債権者らから本件仮処分申請のあった後に当裁判所宛に自ら上申書(昭和四六年七月二九日付)を提出し、債権者らに対する被害を出来るだけ緩和するため、本件土地周辺のブロック塀を改善整備するとともに、本件土地は皮革業者より集めてきたニベの大型トラックへの積替作業にのみ使用し、その集積場としては使用しないことを申出た。しかるに債務者は塀の改善はその申出通りに実施したがその使用方法の改善についてはこれを履行せず従前通りニベの集積を継続しているため、債権者らは依然その臭気に日夜悩まされている状態にある。

右事実によれば、債務者がニベの集積に関し現在本件土地を使用している目的は、大型トラックに積替えるまでの一時的な集積場所とするにすぎないところ、債権者らに臭気による多大の苦痛を与えてまで本件土地をそのような目的で、現在のようなかたちで使用しなければならないという必然性にはいささか疑問の余地があるものといわねばならない。つまり、例えば債務者が自ら先に改善方法として申出たような方法を完全に実施することにより債務者においてもある程度の犠牲を忍びさえすれば、債権者らに与える被害も大巾に減少させることが可能であると考えられるのである。

以上のような次第であって、右にみたような本件土地周辺の環境、債権者らの立場、債務者が本件土地を現在のようなかたちで使用しなければならない必然性、それにより債権者らの受ける被害の程度等を綜合的に考察すれば、債務者が現在のようなかたちで本件土地の使用を続けようとしている限り、その臭気により債権者らの受ける被害は明らかにその受忍義務の程度を超えたものといわねばならない。

よって、その救済のため主文の如き仮処分を命ずる理由と緊急の必要性があるので主文のとおり決定する。

(裁判官 藤井勲)

<以下省略>

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